「愛犬の涙やけがひどいです…」「涙やけを改善したいな!」 という飼い主さんは多くいらっしゃいます。 拭いてあげてもよくならないし、なにか自宅でできる方法はないかな…と不安や疑問もあることと思います。 犬の涙やけにはさまざまな原因がありますが、食事の変更でよくなる場合もあります。 この記事では、犬の涙やけについて、原因や治療法(主に食事について)お伝えしています。 「愛犬の涙やけを少しでも改善したいな!」という飼い主さんには参考になると思いますので、ぜひ読んでみてくださいね!
犬の涙やけの原因とは?
犬の涙やけは、医学的には『流涙症;りゅうるいしょう』と言われ、流れ出た涙によって毛が茶色に変色してしまう状態です。 トイプードルやマルチーズなどの小型犬に比較的多く発生する傾向があります。 涙やけの原因としては、
涙が多い
涙がうまく流れない、あふれてしまう
涙が眼の表面に保持できない
ことがあり、これらが重複して発生していることもあります。
犬の涙やけの治療法
犬の涙やけの治療法は、その原因により異なります。 すなわち、涙の流出路が詰まっている場合には、その部分の解除が有用となります。 鼻涙管(眼と鼻をつなぐ管;涙の流れ道)洗浄は通常麻酔をかけて行い、涙点から入れた液体が鼻に抜けることを確認します。 また、逆さまつげが入っている場合には除去することで、眼瞼が内反しているときには、手術により整復して対応します。 このような外科的処置以外にも、犬の涙やけは、食事管理にて改善することもあります。
犬の涙やけとフードの関係
ドッグフードを変更することで、涙やけが改善した・悪化したということはしばしばあります。 現在のところ、フードと涙やけの関連は明確にはなっていませんが、フードによるアレルギー反応の可能性や、フード中の脂質成分のバランスなどが関与している可能性などが考えられています。 実際、涙やけが良化するフードは個体によって異なりますが、皮膚用の療法食への変更で改善する症例は多くいます。 皮膚用の療法食においては、
ω3系不飽和脂肪酸(EPA、DHA)の配合
クルクミンやアロエベラ、ビタミンCやタウリンなどの配合
抗活性酸素物質であるビタミンEやビタミンC、ルテインなどの配合
されたものがあり、これらは、皮膚や被毛トラブルを改善するのみならず、涙やけを良化する可能性もあります。 療法食については、動物病院での処方となりますので、主治医の先生にご確認くださいね。 また、食物アレルギーが原因で涙やけを起こしている子もいます。 そのため、アレルゲンを回避できる食事を選んであげることも方法のひとつとなります。 『何がアレルゲンなのか?』を特定するためには、除去食試験や食物負荷試験、血液検査(IgE検査、リンパ球反応検査)や皮内反応試験などにより診断が可能です。 ただ、血清総IgE濃度の比較検討した研究によると、涙やけとアレルギーには関連がなかったとの報告もあり、フードの種類と涙やけの関連性については、今後の研究が期待されています。
ω3系不飽和脂肪酸について
ω3系不飽和脂肪酸は、特に魚油や植物性油脂に多く含まれており、α-リノレン酸、DHA、EPAなどがあります。 ω3系不飽和脂肪酸の効能としては、
抗炎症作用
中性脂肪・コレステロール値の改善
血圧を下げる
動脈硬化・血栓の防止
血流改善
癌細胞の抑制
アレルギー症状の緩和
…などとさまざまあり、なかでも肝臓での中性脂肪の産生を低下させる働きやコレステロール値を改善する作用には着目されています。
犬の涙やけと血流との関係
また、涙やけはマイボーム腺機能不全によっても生じます。 マイボーム腺機能不全とは、涙中の脂分を分泌する腺であるマイボーム腺が、脂にて詰まってしまった状態です。 「マイボーム腺になぜ脂が詰まってしまうのか?」は諸説ありますが、
体質
炎症
感染
などが原因と言われています。 改善方法としては、綿棒での清拭や蒸しタオルによる脂の融解(まぶたの血流の改善)により良化することがあります。 蒸しタオルによる脂の融解は、1日2~3回を目安として行うといいですね。
犬の涙やけは、添加物の影響もある
ドッグフード中の添加物が多いことで、涙やけが多く発生する可能性もあります。 そのため、なるべく添加物の少ないフードを選ぶことも、涙やけ改善の一助となります。 ここでいう添加物とはすべての添加物を指すわけではなく、合成着色料や香料などの見た目や香りをよくするための人工的な添加物を言います。 涙やけにおすすめのフードは、人工的な添加物がなるべく最小量であり、天然由来の成分を使用しているものです。 添加物については、フードのパッケージに記載されているため、確認をしておきましょう。 また、あまりにも安価なペットフードは、粗悪な原材料が使用されていることもあるため、ある程度の価格帯の商品を選ぶといいかもしれませんね。
おやつは控えるといいかも
おやつは添加物が多く、高タンパクであるものが多いため、涙やけに影響する可能性があります。 (※タンパク質はアレルゲンとなる可能性が高いからです。) ジャーキーや乾燥肉などの犬用おやつや、人が食べるものは極力与えないようにしましょう。 また、療法食を用いている場合には、より注意が必要です。 なぜなら、療法食はそれ単独で使用した場合に効果を発揮する食事なので、おやつを与えてしまっては全く意味をなさなくなってしまいます。
腸内環境の改善も、愛犬の涙やけを良化する可能性あり
乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティクス(善玉菌)、米ぬかやオリゴ糖といったプレバイオティクス(善玉菌のえさ)が配合された食事により涙やけが改善する可能性もあります。 実際、ビートパルプやオリゴ糖、ビール酵母などが使用されたドッグフードにより、涙やけが良化したという報告もあります。 また、腸内環境が良化することは、免疫力の向上にもつながるため、感染や炎症も生じにくなる傾向があり、乳酸菌やオリゴ糖などを積極的にフードに取り入れることもよいかもしれませんね。 今日から簡単に取り入れられるプレバイオティクスのひとつとして、フラクトオリゴ糖があります。 フラクトオリゴ糖は難消化性のオリゴ糖であり、血糖値をあげずとも腸内フローラの改善をする可能性があります。 ワンちゃんは甘いものが好きな子が多いため、嗜好性の向上にもつながりますね。 量に決まりはありませんが、小型犬であれば、1日ティースプーン1杯程度から始めてみるといいでしょう。 ただし、おなかが緩くなる場合もあるため、愛犬の様子を見て決めるようにしましょうね。
【まとめ】犬の涙やけの原因や食事・血流について
犬の涙やけの原因には、涙が多い・涙がうまく流れない・涙を眼の表面に保持できないなどがあります。 外科的に処置して改善することケースや食事変更で良化することもあります。 涙やけ改善におすすめの食事スタイルとしては、
ω3系不飽和脂肪酸が豊富に含まれている
添加物をあまり含まない
腸内バランスを整える
おやつはNG
といったことがあり、個体によって効果はさまざまですが、ぜひ取り組んでみる価値があると思われます。 同時に、愛犬の涙やけは、濡れてしまった部分をきれいにしてあげることも大切です。 定期的に清拭、こまめにカットしてあげましょう! 参考資料
小泉 亜希子, 栗原 里奈, 中山 みずき, 熊谷 安希子, 増田 健一, 大辻 一也,ドックフードの変更によりイヌの涙やけ改善が認められた一例,ペット栄養学会誌,2019 年 22 巻 2 号 p. 95-100
辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020,EDUWARD Press,p639-p641
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